きみへの想いが巡る

 
中学生だったとき、仲の良かった友達がある日突然ジャニオタになった。
交換日記にいきなりTOKIO関ジャニ∞の歌の歌詞を書き始めた。
 
私はジャニーズには全然興味なくて、どっちかっていうとアンチ派だった。Hey!Say!JUMPのUMPがテレビで流れたりすると、なにこの高音で歌う男の子…なんかまた変なの出てきた…って思ってた。
(知念くんごめんね……)
 
だけど、その友達がJUMPのカレンダーを持ってきて、「どの子が1番好き?」って聞いてきた。すっかりJUMP担になってた友達。正直Hey!Say!JUMPなんてこどもじゃんって思ってて興味なかった。(実際はBEST兄さんはみんな年上だった…)
 
え〜…ジャニーズっていうほどイケメンいなくない?って心の声を出さないようにひとりひとりの顔を見ていった。
 
 
この子は違うな…
この子らは絶対年下でしょ…
なんかこの子も好みじゃないな…
 
……この子が1番ましかな?
 
私「この子!」
友達「え!いのおくん?」
 
 
そうやってそのとき無理やり消去法で決めた私の1番が伊野尾くんでした。
(だいぶ失礼なこと言い続けてるけどほんとごめんなさい)
 
 
ジャニーズに興味なかったのに、友達がJUMPの話をするたび、いろんな写真を見せてくれるたび、私の1番の子は?伊野尾くんは?って伊野尾くんのことが気になった。
少クラやドル誌の存在を教えてもらって、見るようになった。ど田舎だったからテレビと雑誌しか伊野尾くんに触れられる媒体がなかったし、Twitterなんてものも知らなかったけど、それで十分だった。
 
POTATO2008年5月号の伊野尾くんを見て、かっこいいのにそれだけじゃ表現しきれない何かを感じた。目が離せなくなった。
そのときは何もわからなかったけど、たぶんあの時、私はジャニオタになったんだと思う。
 
まわりにもJUMPを好きな子が増えて、でも担当は割と均等に分かれてたから、伊野尾担は私だけで。まわりはそんな状況で、情報収集源はテレビと雑誌だけで、だけど自分は少数派なんだって自覚があった。今思うとなんでそんな自覚があったのか不思議。たぶんテレビの露出を見てなんとなく感じ取っていたんだと思う。ソロパートなんかほとんどない。歌番組のときは、1回、たとえそれが1秒でもソロで抜かれれば通常運転。2回もうつれば万々歳。少クラでさえBメロでやっと名前のテロップが出るのが私の大好きな人で。
 
伊野尾くんの声がよく聞こえるUMPのAメロ「限りあるこの時を 君に 奇跡今届けたい」が好きだったし、Your Seedで3.4.3のフォーメーションになったとき、3の先頭で踊ってる伊野尾くんを見て嬉しくて嬉しくて。少クラでBack In Timeを披露したときは、突然の伊野尾くんのソロパートにびっくりして。何度も何度もそこばっかり再生して。スクールデイズを披露したときは、伊野尾くんのダンスはぐだぐだだったけど隣のメンバーを見てなんとか踊ってて、本人はすごく楽しそうで、私も楽しくて。歌やダンスがすごく上手い訳ではないけど、独特なマイクの持ち方が好きで、伊野尾くんのダンスが1番好きで。伊野尾くんのカケラを探して探してかき集めて、自分の中であたためて。あんなにかっこいいのに人気ないのかぁ…って思いつつも、伊野尾くんを見ていてすごく幸せな気持ちになった。
 
でも明らかによく映る他のメンバーを見て、羨んだし嫉妬もした。Your Seedは伊野尾くんのビジュアルは最高だったけど、最後のフォーメーションで必ず伊野尾くんはいなくなってしまう。PVでさえ1番後ろの真ん中にいる伊野尾くんは、センターのメンバーにすっぽり隠れてしまう。Majic PowerやSUPER DELICATEはPVなのに伊野尾くんが全然映らない。その当時伊野尾くんは大学生で、スケジュールが関係していたのかもしれない。それでも以前にも増して自担が映らなくなって、どんどんメンバー間の露出に差がでてくることが悲しかった。JUMPを見ていて辛いと感じることが多くなった。ジャニオタ辞めたいなって考えるようになった。
 
そんなこともあったし、自分の大学受験とJUMPの露出がかなり少なかった時期も重なって、自然と伊野尾くんを見る時間が少なくなった。
 
自分自身の環境も落ち着いて、Come On A My Houseあたりからまた伊野尾くんを追いかけるようになった。
それからJUMPと伊野尾くんの活躍が増えてきて。伊野尾くんはソロパートも増えて、テレビの露出も増えたし、連ドラにも出て。JUMP内でもメンバー間の露出の差がかなり小さくなってて、私が理想としていたのはこれだ!って思った。他のメンバーにも目がいくようになって、伊野尾くんを、JUMPを応援するのが楽しかった。伊野尾くんを知りたての頃みたいに、もしくはそれ以上に楽しかった。
 
私はカモナが出たときもRWMが出たときも伊野尾くんが連ドラに出たときも、いよいよJUMPが、伊野尾くんが、人気になる!って思った。でもなかなか思うように爆発的なブレイクの感じを受けなかった。そんなJUMPが去年24時間テレビのパーソナリティーで活躍して、心から嬉しかった。最後のメドレーを歌うJUMPを見て、番組の主旨とは関係なく、JUMPが誇らしくて涙が出た。これをきっかけに今度こそ売れるぞって思った。それ以降本当にJUMPの人気が上がった。中でも伊野尾くんの人気はすごい。芸能界の人も一般の人も伊野尾くんに注目する人が増えた。正確で具体的なデータなんてないのに、人気になったことを確かに実感するから相当なんだろうな。
 
 
同時に、私が理想としていたバランスが崩れてきた。
 
 
もっと伊野尾くんのソロパートが増えて欲しい、もっとテレビに映って欲しい、それはずっと思ってた。だけど、伊野尾くんが1番目立って欲しいとは思わなかった。他のメンバーを押しのけて前に出てきて欲しいなんて思わなかった。ただもう少しだけ伊野尾くんのカケラが大きくなったらいいなって願ってた。
 
舞台のお仕事は本当に本当に心から嬉しかった。でもその後、同時期に連ドラ出演が決まって、生放送のラジオも決まった。新曲の発売もあった。正直手放しで喜べなかった。そもそも舞台と連ドラって同時にできるものなの?そんなに頑張らなくていいよって、伊野尾くんが心配だった。深夜にドラマの撮影して、その後2公演も主演で舞台に出るって尋常じゃない。お願いだから休んでほしかった。これで燃え尽きて、芸能界から消えてしまうんじゃないかって恐かった。
 
24時間テレビの後はもっと個人での露出が増えて、伊野尾くんの名前を口にする人が増えて。ソロパートがあるのは当たり前になって、カメラに抜かれる回数も増えて、PVでも前のほうのポジションにいて。もう伊野尾くんは十分映ったから他のメンバー映してあげてって思った。なんか腹立たしくもなった。今まで全然映してくれなかったのに、ジャケットの写真のサイズだって小さかったのに、急に手のひら返したように扱いがよくなって。デビューして8年も経つのに彗星の如く現れたかのように、このかわいい子知ってる!?って言われても。知ってるよ、ずっと前から魅力的な人だよとしか返せないよ。
 
気づいたら伊野尾くんを好きな私は多数派になってて。伊野尾くんのカケラを集めきれなくなって、伊野尾くんのせっかくの新しい仕事に素直に喜べなくなって、ただ楽しいって気持ちだけで応援できなくなってた。
前みたいに、伊野尾くんを知りたての頃みたいに、少し伊野尾くんのカケラが大きくなった頃みたいに、ただ楽しいって気持ちで応援したい。こんな歪んだ感情を持ったまま応援してるのがいやだ。
 
 
でも担降りなんてできない。
 
 
どんなに歪んだ感情を持ってても、伊野尾くんの笑顔を、ピアノを弾いてる姿を、踊ってる姿を見て、やっぱりこの人が大好きだって思うから。伊野尾くんは笑顔ひとつで、私のこんな感情はなかったことにしてしまう。
 
 
 
JUMPの曲を聴きながらこれを書いていたら、スナップが流れてきて、涙が止まらなくなった。
 
 
 
 今も目を閉じれば 胸のフィルム焼いた
 きみがいる
 
 花が散り 瞳に映る世界が変わっても
 となりできみが笑うだけで
 全ては虹色になる

 

 
 
 
やっぱり好きになった頃の伊野尾くんは特別で、あの時のただただ好きだった気持ちも思い出すから、黒髪で今よりもっと華奢で精一杯かっこつけてる伊野尾くんが恋しくなってしまうけど。伊野尾くんは自身を取り巻く環境は変わらないって言うけど、変わってしまうと思う。いい意味も悪い意味も含めて伊野尾くんだって前と全く同じではない。私も変わってしまった。私の周りも変わった。でも「ただ僕のことを好きでいてくれたら、それでいい(笑)。」と伊野尾くんが言うから。私もただ伊野尾くんを好きでいたいから。
 
 
 
 季節変わるように 表情を変えて
 惑わせて魅せるきみを
 忘れないように 色あせぬように
 目の前にある景色と
 きみを強く胸に焼き付けた